2016年9月25日日曜日

【2013年度社会調査実習報告書】人口減少時代の地域づくりⅤ――ソーシャル・キャピタルは地域を救えるか――

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『人口減少時代の地域づくりⅤ――ソーシャル・キャピタルは地域を救えるか――』


「はしがき」より


 本書は、2013年度に大学院人文社会系研究科で開講された「調査企画」「量的調査」、ならびに文学部社会学専修課程で開講された「社会調査実習」に参加した総勢23名による、社会調査実習の報告書です。東京大学の社会学研究室が主宰し、同研究室に所属する赤川学(准教授)・常松淳(助教)が授業を担当すると同時に、調査責任者として調査実習の企画・運営全般を統括しました。

 本調査の全体に関連するテーマは「人口減少時代の地域づくり」です。これは2008年以来、私たちの実習における一貫したテーマとなっています。日本社会は2004年以降、人口減少社会となりました。人口減少は地域の社会のさまざまな側面に影響を与えると考えられています。また2011年の東日本大震災・福島第一原発事故をきっかけに、人びとの「絆」や「信頼」、ネットワークから作り出されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が、復旧、復興、地域再生に大きな役割を果たすことが明らかになってきました。特に今年度は、アンケート調査から計測される、個人や地域全体のソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が、居住地域への愛着、外国人に対する寛容さ、主観的な健康などの事象に対してどのような影響を与えるのか、という統一した問題意識のもとに、各章の分析が行われています。

 具体的には、2011年と2012年に行なった長野県と京都府の4地域8地区の住民のみなさまを対象に行なったアンケート調査(質問紙調査)を、新たな角度から再分析することを目指しました。特に社会関係資本という観点からみたときに、それぞれの地域・地区にどのような特徴があるか、という視点を重視しました。その上で、調査対象地となった地区のいくつかを受講生たちが実際に訪問して、研究成果を報告させていただくとともに、地域の皆さまから貴重なご意見やご感想をいただくことができました。各章の分析は、昨年度までに量的な調査から得られた研究成果を、実際にその地域・地区に居住しておられる方がどのように感じられたかを踏まえて、バージョンアップしたものです。この場を借りて、報告会にご出席いただいたみなさま、調査にご協力いただいたみなさまに感謝申し上げる次第です。

 それぞれの論文は、本学大学院人文社会系研究科社会学専門分野に所属する大学院生と、文学部行動文化学科社会学専修課程に所属する大学生らが、自らの問題意識をもとに、自分たちで調べ、自分たちで考えたことを表現したものです。論文のアイデアはそれぞれの論文の著者に帰属しますが、論文中の不備や至らない点に関する責は、調査責任者が負っています。取材にご協力いただいたすべての方々に心からの感謝を申し上げるとともに、今後とも忌憚のないご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。


目次


はしがき (赤川学・常松淳)

第1章 使用したデータと調査対象地の概要(姫野宏輔)
第2章 地域間をつなぐ活動――上清内路/下清内路を事例として――(清原悠・石丸沙樹)
第3章 地域への愛着を高めるものと地域への愛着がもたらすもの――清内路を事例として(岡沢亮・中村百葉)
第4章 地域指標が外国人寛容度にどう影響するのか――6地区比較を通して――(鄭タン揚・橋本卓)

第5章 主観的健康感の規定要因――清内路の事例に即して――(中俣尚美・水垣祐真)
第6章 「地域との一体感」を高めるには――奈良井・木曽平沢の比較から――(坂井愛理・園田薫)
第7章 奈良井・木曽平沢における県の一員意識とその特徴(小林祥太・堀江和正)
第8章 移住によって空き家問題の解決は可能か――移住への寛容性の2地域比較に着目しながら――(宮部峻・油布郁)

第9章 「協力行動意識」が醸成されるには――木曽平沢・奈良井地域の社会的ネットワークと信頼に着目して――(赤木皓介・櫛原克哉)
第10章 居住地域への愛着はどのように高められるのか――対外意識に着目して――(馬渡玲欧・竹内萌)
第11章 地域主義とインターネット利用が外国人への寛容さを高める可能性について――小布施と都住の比較を事例として――(小川豊武・上野雅哉)
第12章 主観的健康を高めるソーシャル・キャピタルの男女間比較――小布施町を対象として――(平山はづき・小麥田直人・福永恵理)

調査結果の概要(単純集計)
2011年度調査票(楢川)
2012年度調査票(小布施・清内路)
1年間のあゆみ
調査実習参加者名簿



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