ダウンロードはこちら
『人口減少時代の地域づくりⅣ——「元気な地域」を比較する——』
「はしがき」より
本書は,2012 年度に大学院人文社会系研究科で開講された「調査企画」「量的調査」,ならびに文学部社会学専修課程で開講された「社会調査実習」に参加した総勢30 名による,社会調査実習の報告書です.東京大学の社会学研究室が主宰し,同研究室に所属する赤川学(准教授)・常松淳(助教)が授業を担当すると同時に,調査責任者として調査実習の企画・運営全般を統括しました.
本調査の全体に関連するテーマは,「人口減少時代の地域づくり」です.これは2008 年以来,本実習での継続したテーマとなっています.日本社会は2004 年以降,人口減少社会となりました.人口減少は地域の社会のさまざまな側面に影響を与えると考えられています.また,2011 年の東日本大震災・福島第一原発事故をきっかけに,人びとの「絆」や「信頼」,ネットワークから作り出されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が,復旧,復興,地域再生に大きな役割を果たすと期待されています.
そのような問題意識をもとに,今年度は特に,長野県や京都府で元気な地域づくりを行なっている4つの地域や地区の住民の方に対して行なったアンケート調査(質問紙調査)をもとに,人びとのつながり,信頼,「お互いさま」という互酬性の規範などから構成されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)がどのように地域を支える力となるのか,という問題意識のもとに,各章の分析が行われています.
具体的な知見は個々の論文に譲りますが,それぞれの論文は,本学大学院人文社会系研究科社会学専門分野に所属する大学院生と,文学部行動文化学科社会学専修課程に所属する大学生らが,自らの問題意識をもとに,自分たちで調べ,自分たちで考えたことを表現したものです.論文のアイデアはそれぞれの論文の著者に帰属しますが,論文中の不備や至らない点に関する責は,調査責任者が負っています.取材にご協力いただいたすべての方々に心からの感謝を申し上げるとともに,今後とも忌憚のないご指導を賜りますよう,お願い申し上げます.
目次
はしがき (赤川 学・常松 淳)
第1章 本年度実施した社会調査と調査対象地の概要(姫野宏輔)
第2章 地域コミットメント意識の多次元性と地域活動参加の関係――地域帰属意識と地域への愛着――(入船雄介・品治佑吉)
第3章 主観的健康感の差異要因・規定要因分析――清内路・小布施・綾部の事例に即して――(田巻綾那・石塚昌輝)
第4章 高齢者への家族サポートの規定要因――綾部地区の比較から――(打越文弥・麦山亮太)
第5章 子育て・介護にソーシャル・キャピタルが与える影響(上林薫・谷口公一)
第6章 災害情報の取得力とソーシャル・キャピタル――社会活動への参加に着目して――(嶋田吉朗・黄銀智・利根川真輝)
第7章 外国人寛容度の規定要因――ソーシャル・キャピタルとの関連に注目して――(清水亮・山崎諒二)
第8章 小布施町内における小布施地区と都住地区の外国人に対する寛容度の違い――小布施町小布施地区の独自性に着目して――(高艸賢・山根佑介)
第9章 幸福度を規定する要因は何か――上清内路と下清内路の違いに着目して――(佐藤和宏・諸岡耕作)
第10章 社会参加の経年変化は幸福度にどう影響するか――ソーシャル・キャピタルの増減を意識して――(川島淳之介・出口善之)
第11章 家族関係満足度の規定要因(團康晃・鈴木鷹志)
第12章 権威主義的態度が互酬性に与える影(伊藤健彦・永島圭一郎)
第13章 自由記述および回答者の傾向――内容分析と計量的分析における比較を通じて―― (時津弘・宮崎弦・山中麻莉子)
本調査の調査結果概要について(単純集計)
調査票
1 年間のあゆみ
調査実習参加者名簿
0 件のコメント:
コメントを投稿